「・・・いいよ。」とりあえず「Yes」と言ってしまう。
いつからか、「No」と断ることが苦手になった。
もしかしたら、ずっとそうだったのかもしれないけれど。
それがより鮮明になったのは、社会人になってから。
人は私のそういう部分に気づいているのか、いないのか。だからよく誘われた。
ネットワークビジネス、エステ、自己啓発系セミナー、各宗教・・・
ああ、そうだ。絵画もあったんだ。
街を歩いていたら、「今、絵の展示会をやってます。観に来ませんか?」と
女性に声を掛けられた。
もともと絵を見ることは嫌いではないから、ついていく。
小さなギャラリーの壁に展示されたポスター風の絵たち。
どれも明るい気分にさせてくれる素敵な絵だった。
「この中で、どれが一番お気に入りでしたか?」
そう質問された私は、「これです。」と答える。
さあ、そこからが大変。
「どうぞ」と席を案内され、さあ、“商談”が始まった。
一括や分割での料金の支払いの説明や、作家の説明。
「今はまだ知られていませんけど、これから有名になるので、 今がお買い得ですよ~。」
私の態度がハッキリと食いつかないからだろう、説得?
時間は長くなる。
(ああ、疲れた・・・いつまでこれ続くんだろう・・・)
さすがに疲れる。だって目の前の人は友だちじゃないから。
・でも、断るのはなあ・・・こんなに説明してくれたから
・この人の時間、結構私がつかっちゃったなあ
こんなふうに私は考え始める。となると、「断る」への道のりは余計遠のく。
そして、結局分割支払いで一旦サイン。
ふう~ やっとこの場から離れられる。
まあ、いいか殺風景な部屋にこんな絵があれば気分も明るくなるから。
家に帰って(まだ品物は手にしていない)、あの長かった時間を振り返る。
果たしてサインしてよかったのだろうか??
今年は舞台をあと2本抱えてる。アルバイトできる期間は少ない。
ええっ、払えるのか? 他のこと切り詰めなきゃいけなくなるよね。
でも、サインしちゃったしなあ。
ああ、クーリングオフってものがあるか。
一晩、一人会議ののち、相手に断りの電話を。
これがまた心がずっしり重くなる作業。
「ああ・・・そうですか・・・」
相手の口調も重い。でもそれは一瞬。
さすがに百戦錬磨のキャッチセールス。切り替えはとっても早い模様。
そして無事、クーリングオフの権利を得、絵画から開放される私。
とりあえずいったん引き受け、それから断る。このころの私の常とう手段。
断るのなら、最初から断りなさい! って、これを書いてる「今の自分」が言ってる。
こんな経験を数多くして、時には大損をして、やっと「No」と言えるようになった。
何かの集まりで名刺交換した人に、翌日「よかったらお茶しませんか?」の連絡。
(な~んか、気が進まないなあ・・・)と心がざわついたら、丁重にお断りする。
お茶していて、セールスの話をされても、「私、興味ないの。」って
ストレートに相手に伝えることもできるようになった。
無駄な出費と無駄な気づかい、無駄な後悔なし。
断ることで、相手がどう私のことを思うのか、なんて、
それは相手の問題であって、私の問題ではない。
(ああ、そうか)
⇒ 相手にYes Noの選択肢があることを理解している人もいれば
(ムッとした表情で)← ご本人こういいう表情だって気づいてないみたいだけど
⇒「あ、そう」と、私が「Yes」と言わないから落胆と不快を感じる人もいる。
大切なのは、“自分がどうしたいのか?”
相手の顔色ばかりうかがっていたら、結局自分が損することになるから。
自分の本音を大切にする。
これは今も訓練の日々。