わたしのこと

その感情、もしかして避けてる?役作りにひと苦労する

それはある舞台公演が決まり、稽古に励んでいたころの話。

 

3人姉妹の末っ子の役についた私。稽古が始まったものの、
なかなか役がつかめない・・・

台本を手から離し、実際に動く稽古(立ち稽古)になってもそれは変わらず。

「う~ん・・・」演出家も渋い顔になる。

「このシーンは彼女が自分のしたことを姉妹に語るシーンだよ。
彼女が初めて口にするシーンなんだよ。」

 

(うん、わかってる。わかってる。)

彼女は玉の輿とも言える結婚をしたものの、夫の浮気と暴力に耐えかねて、
ある青年と心を通わせる。
でもここはまだ人種差別が残るアメリカ南部。
人のうわさはたちまち夫の耳に入り、ののしりと暴力の中彼を銃で撃つ。
幸い夫は命を取り留めたものの、ここは実力者。自分に都合の良いように
裁判を勧めようとしている。

彼女の明るく(明るすぎるくらい)振舞っていたその裏にある心の痛みや苦悩
引きつった笑顔にはそんな人生が隠されていた。

 

彼女と私の共通点って、何だろう? う~ん、わかんない!!

 

こんなことしてたら本番が来ちゃう。ということで、
演技トレーナーS師匠へ個人レッスンを申し込む。

 

S師匠
「誰かを銃で撃ったこともないし、ナイフで刺したこともないけど・・・

誰かを殺したいほど憎いって思ったこと、今までの人生でない??


「う~ん・・・あります・・・何度も。」

S師匠
「じゃあ、そう思った時のこと、どれでもいいから一つ思い出してみて。
それは何歳くらいのときのことなの? 場所はどんなところ?
そこには誰が ”いるの”? 何を話して”いるの”?・・・

その時の記憶について私に質問を繰り返すS師匠。
その質問の仕方は「~していたの?」から「~してるの?」と変化して、
今まさにその場に自分自身がいるような感覚になってくる私。

 

すると、身体の中からグワッとマグマのような怒りがこみあげてきた。

S師匠
「そのまま感じながら、セリフを出してみて。」

 

流れるように何の躊躇もなく、セリフが私の中から湧いて出てきた。
(こんな感情にならなきゃいけない)と、いつもならガッチガチの身体も
リラックスしたままで。

そうなりながらも私の一部は冷静に自分自身を見つめてる。

 

ああ、そうか・・・これが憎しみ。
本当は私、この気持ちをたくさん持っているはずなのに、
いつの間にかそれが ”無いもの” のようにふるまってた。
私にはそんな ”汚い感情” はありません! みたいに。
だから憎しみという感情だって、言葉では理解できるけど、それがどんなものなのか、
わからなくなってしまってるんだ。

 

この日のマンツーマン稽古で、私の役作りに一筋の光が見えた。と同時に、
私が「感情を感じられない」きっかけについても少しだけ知ることができたのでした。

 

 

 

 

 

 

 

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